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2.2.3災害応急対策計画における問題点
災害応急対策計画における主要問題点は以下のとおりである。
問題点1:防災ビジョンおよび想定される被害程度にリンクしていない
問題点2:緊急度と重要度を考慮した業務分類・活動体制となっていない
問題点3:情報管理の考え方が弱い
問題点4:広報の位置づけが弱い
問題点5:勤務時間内、勤務時間外の防災力の変化が十分考慮されていない
問題点6:防災基幹施設の被災やマンパワー低下に対する配慮が薄い
(1)問題点1:防災ビジョンおよび想定される被害程度にリンクしていない
阪神・淡路大震災後、市町村の防災担当者の方からよく聞かれるのは、「阪神・淡路大震災級の地震が当市町村を襲った場合、火災件数や要救出現場数はどれ位になるでしょうか」といったことである。そこで。防災担当者に目安的な数字を示すと目の色が変わり、「そんな数字ではとても対応できない」とか「そういう数字を処理するとしたら、消防団や住民にもっと頑張ってもらわなければいけない」といった反応が返ってくる。
表14を用いると、人口1万人の町を阪神・淡路大震災級の地震が襲った場合、管内には100を越える要救出現場が発生することになる。
この人口規模の町役場の職員数は1OO人前後であるから、全ての職員を発災直後から要救出現場に張りつけたとするとそれだけで手一杯になってしまう(実際は、全ての職員が発災直後から活動に参加できる可能性はきわめて低い)。また、たとえ職員を一現場当たり一人張りつけたとしても、家屋の下に生き埋めになっている人を救出するには複数の人員が必要である(1現場に10人前後は必要という意見もある)。
しかも町職員は、情報収集、多数の被災者への対応(避難所の開設・運営、給食・給水、物資の輸送等々)、二次災害危険(土砂災害、老朽ため池、河川堤防損壊)の把握、防災基幹施設の被害状況把握(庁舎、重要道路、水道等)の活動にも従事しなければならない。このことからも、町職員で対応するの困難であることがわかる。
それでは誰が要救出現場の活動に従事するのか?消防本部という声もあるが、火災が発生したら消防職員はそちらを担当せざるを得なくなる。消防団も火災鎮圧を重視した活動をする可能性が高い。
そうだとすると「一体誰が?」というところに議論が行き着く。そこに至って始めて、地域住民や事業所の力に依拠するという解決策を見出すことになる。
このように、具体的な被害程度(数値)を念頭に置いたとき、始めて課題が具体的に見え、その対処方策が考えられるようになる。想定される被害程度とリンクさせるとはこのような意味を持っている。
しかしながら、2.2.1の「総則」の項で述べたように、想定される被害程度を記載している地域防災計画は少なく、想定被害程度等が記載されていても、それを念頭においた応急活動体制の規模や活動方法が記載されていない災害応急対策計画が多い。
(2)問題点2:緊急度と重要度を考慮した業務分類・活動体制となっていない現在の災害応急対策計画には、災害対策本部の「事務分掌表」があり、各課毎に発災時の業務内容が記されている。しかしながら、この業務内容にはその緊急度や重要度が示されていないため(どの業務内容も等価的に見なされているため)、災害が発

 

 

 

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